記憶のかけら +

花色の想い


カーファックス センター(*) へ向う
バス停前の 小学校の塀に沿って
毎年一面の桜が咲いた

私は いつも一人だった

今は あの時よりも 幸せだけど
幸せなのに
あの時の 桜が 忘れられない



(桜の花言葉:精神美)
* オックスフォードの街の中心
真紅のバラの花束を貰うなんて
これが始めて

あの時は 何も言えなかったけれど
今は あなたに会って
『私も 愛してる』 と言いたくて
叫びだしそうなくらい 大好き



(赤いバラの花言葉:愛)

アーモンドの花は ギリシアの風を運んで
私をエーゲ海の小さな島から
スペインへ連れて行った

一緒にいた時は 気にしていなかったけれど
いなくなると 寂しい

桜によく似た アーモンドの花のように
あなたに似た人はいるのだけど
どこか あなたとは違う



(アーモンドの花言葉:真心の愛)

チェスターで バスに乗り遅れ
バースに着いた時は もう夕暮れが近づいていた

いつものように すぐやむ雨だと思っていたのに
降り始めた雨は 一向にやむ気配を見せず
私は大きな荷物を抱えて 雨に濡れながら
その日の 宿を探し始めた

街はずれの その B&B に辿り着いた時には
下着まで ずぶ濡れで
そんな私をかわいそうに思ったのか
宿の主人は 一番見晴らしがよいという広い部屋を
私に安く 貸してくれた

窓辺にはゼラニウムの花が 雨に打たれて揺れていた



(ゼラニウムの花言葉:決心)

いつか 私が
『青い花が好き』と言ったのを
覚えていてくれたのね

あなたは 両手にいっぱいの
青い花束を差し出して
照れくさそうに 笑った

こんなことなら
さっき ケンカしなければよかった



(千鳥草の花言葉:自由)

私の中から あなたを想う気持ちが溢れて
あなたへと向って 一直線に流れ出す

私には それを止めることができなくて 苦しくて
自分でも どうしようもなくなっていたけれど
私の激情であなたを奔流するわけにはいかなかった
あなたを 失わないために

突然 日本を立って
あなたから 逃げ出したインドでは
生まれて初めて 黄色い鳳凰樹を見た

思いっきり 笑って 遊んで
自分を取り戻してから 帰るから

私を 探さないで


子供の頃 住んでいた家には
駅からも見える大きなポプラと
たくさん実のなる枇杷の木と
見事な八重桜があった

濃ピンクの八重桜が咲く頃には
山吹の黄金色の花も咲いて
家の周りは輝くように明るくなった

池にはカエルが卵をいっぱい産んで
おたまじゃくしで遊ぶの

秋には散ったイチョウが絨毯のように
フカフカに敷き詰められて その上で眠った

とても 小さな小さな家だったけれど
大好きだった

こんなに可愛げのない私は
きっと子供時代を
あの家に置いて来てしまったのね

(八重桜の花言葉:しとやか)

オレゴンの家の前の道には
夏になると 真っ白なレースフラワーが競うように咲いて
まるでヴァージンロードのようになった

自然に囲まれた生活は
その贅沢さを 時に見失うけど
そこには "人生" があった

This is life.

『この花、レースフラワーって言うの
日本ではお花屋さんで売ってるわ』
と言っても 誰も本気にしなかった


(レースフラワーの花言葉:可憐な心)



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