私は いつも一人だった
今は あの時よりも 幸せだけど 幸せなのに あの時の 桜が 忘れられない
あの時は 何も言えなかったけれど 今は あなたに会って 『私も 愛してる』 と言いたくて 叫びだしそうなくらい 大好き
一緒にいた時は 気にしていなかったけれど いなくなると 寂しい
桜によく似た アーモンドの花のように あなたに似た人はいるのだけどどこか あなたとは違う
いつものように すぐやむ雨だと思っていたのに 降り始めた雨は 一向にやむ気配を見せず 私は大きな荷物を抱えて 雨に濡れながら その日の 宿を探し始めた
街はずれの その B&B に辿り着いた時には 下着まで ずぶ濡れで そんな私をかわいそうに思ったのか 宿の主人は 一番見晴らしがよいという広い部屋を 私に安く 貸してくれた
窓辺にはゼラニウムの花が 雨に打たれて揺れていた
あなたは 両手にいっぱいの 青い花束を差し出して 照れくさそうに 笑った
こんなことなら さっき ケンカしなければよかった
私には それを止めることができなくて 苦しくて 自分でも どうしようもなくなっていたけれど 私の激情であなたを奔流するわけにはいかなかった あなたを 失わないために
突然 日本を立って あなたから 逃げ出したインドでは 生まれて初めて 黄色い鳳凰樹を見た
思いっきり 笑って 遊んで 自分を取り戻してから 帰るから
私を 探さないで
濃ピンクの八重桜が咲く頃には 山吹の黄金色の花も咲いて家の周りは輝くように明るくなった
池にはカエルが卵をいっぱい産んで おたまじゃくしで遊ぶの
とても 小さな小さな家だったけれど 大好きだった
こんなに可愛げのない私は きっと子供時代を あの家に置いて来てしまったのね
自然に囲まれた生活は その贅沢さを 時に見失うけど そこには "人生" があった
This is life.
『この花、レースフラワーって言うの日本ではお花屋さんで売ってるわ』 と言っても 誰も本気にしなかった